第1章 最低最悪な彼女
岩ちゃんの強烈なスパイクに鼻血が止まらず、俺は保健室へ。
『可哀想な人』
莉緒ちゃんに言われた言葉が頭から離れない。
岩ちゃんの事は、大好きだし、大事なチームメイトであり、親友だと思ってる。けど、莉緒ちゃんに言われた通り、俺は昔から岩ちゃんに対して劣等感を感じていた。他人から評価される事で、俺は岩ちゃんに負けてないと証明したかったし、岩ちゃん自身にも評価されたかった。だから、俺はバレーだけじゃなくて、勉強も他のスポーツも岩ちゃんに負けないように、頑張ってきた。
ただ、一つ岩ちゃんに好意を寄せてる子達だけはどうしようも出来なくて、どうしたものかと考えた時に、俺は一つの結論にたどり着いた。────奪えばいい。岩ちゃんの事を好きな子に、俺の事を好きになってもらえばいい。岩ちゃんより俺の方がかっこいいって思わせればいい。岩ちゃんはそんなに器用じゃないから、部活と彼女の両立はきっと難しい。岩ちゃんの事を好きな子が俺を選んでくれれば、このどうしようもない劣等感が拭われるかもしれない。岩ちゃんに彼女が出来なければ、岩ちゃんとずっとバレーが出来る。
岩ちゃんを唯一無二の親友だと思う気持ちで俺の劣等感に蓋をしていたのに、莉緒ちゃんには簡単に見抜かれてしまった。
莉緒ちゃんも岩ちゃんの事が好きなんだろう。なら、俺がやる事は今までと同じ。莉緒ちゃんに俺を好きになってもらう。