第1章 最低最悪な彼女
顔を洗おうと水道へと行き、顔を洗い、体育館へ戻ろうと振り返ると、そこには莉緒ちゃんがいた。
「あれ?莉緒ちゃん、俺を追っかけてきたの?」
相変わらず莉緒ちゃんは無表情で、正直女の子にここまで冷たい態度を取られるのは、烏野のマネージャー以来。
「ねえ、そんなに一君が女の子にチヤホヤされるのがイヤなの?」
「え?」
予想してなかった莉緒ちゃんの言葉に俺は驚いた。
「一君に対するライバル意識?」
「ちょ、待って、莉緒ちゃん何言ってんの?」
「無意識でしてる訳じゃないでしょ?」
慌てる俺をよそに、莉緒ちゃんは無視して話続ける。
「おかしいと思ったのよ。一君、あんなにかっこよくて、勉強も出来るし、バレーも上手くて、人望だってあるのに、今まで告白されたこともないし、彼女もいなかったって。全部あなたのせいだったのね。」
「岩ちゃんに彼女が出来ない事に俺は関係ないでしょ。」
「一君に対してどうしてそんなに劣等感を持ってるの?」
その言葉に俺は感情的になってしまい、彼女に手を振り上げようとしたのを、少しの理性が止めた。が、彼女や後ろの壁を思いっきり殴った。
「莉緒ちゃんに俺と岩ちゃんの何が分かる?」
「あなたは一君に何もかも勝ってると他人から評価されないと不安で仕方ないのね。可哀想な人。」
俺が必死に心の奥底に隠していた岩ちゃんに対する劣等感やライバル意識を剥き出しにされ、あの日飛雄に手を上げそうになった時のような感情が溢れ出してきた。
そう、俺はあの日岩ちゃんが言ってくれた言葉に救われたと同時に、岩ちゃんに対して強烈な劣等感を感じていた。
「おい、何やってんだ?」
振り返るとそこには岩ちゃんがいた。
「一君!」
傍から見れば、これは俺が莉緒ちゃんを壁ドンしてる状態。岩ちゃんの表情がみるみる険しくなる。
「あ、ちょ、ま、岩ちゃん!違う!違うから!」
「練習中に何やってんだこのボケ川!」
岩ちゃんの強烈なスパイクが見事顔面にヒットした。