第4章 追い掛けてくる過去(ヒロイン視点)
小さい頃から、お父さんの仕事の都合で、一年以上同じ学校にいる事があまりなかった。仲がいい友達とのお別れも、すっかり慣れてしまって、年を重ねる事に、何処か諦めみたいなものがあって、小学三年生の頃には、私の心はすっかり冷めてしまっていた。仲がいい友達が出来ても、すぐにお別れがきて、最初は手紙を交換してたけど、月日がたつごとに、返信のペースが遅くなり、そしてそれが止まる。その繰り返しだった。
小学四年前の時、宮城に引っ越してきた。当たり障りのない、浅い付き合いでいい。どうせまた引っ越すんだし。そう思っていたのに、珍しくお母さんに友達が出来た。高校卒業と同時に結婚し、十九の時に私を産んだお母さんは、世間知らずで、おっとりした性格で、皆のお母さんと比べ若かった事もあり、気の合うママ友なんて出来なかった。でも、同じクラスの岩泉君のお母さんと仲良くなったらしく、しょっちゅう岩泉君の家に遊びに行ったし、岩泉君のお母さんも、よく岩泉君と私の家に遊びに来てた。岩泉君はバレーを習ってるらしく、よく、バレーをして遊んだ。たまに、岩泉君と仲良しの、及川君っていう、王子様みたいにキラキラした男の子とも一緒にバレーをして遊んだ。
転校する頃には私達も一君と仲良くなって、もう仲のいい友達なんていらないって思ってたのに、一君とのお別れは凄く辛かった。
お母さんも、一君のお母さんとの別れが悲しかったらしく、泣いていた。
宮城を引っ越してからもお母さんはよく一君のお母さんと連絡を取っていて、私も一君と文通を続けていた。いつか一君からの手紙が途絶えるんじゃないかと、不安だったけど、一君は手紙を出せば、かならず返事をくれた。手紙の内容は、バレーの事や及川君の事が殆どだった。
中学に入り、一君が夢中になるバレーに私も興味が出て、バレー部に入った。バレー部に入り、一君と共通の話題が出来た事、バレーの楽しさを知り、益々バレーにのめり込んだ。元々運動は得意な方だった為、バレーは凄く楽しかった。部活の方針で一年生は試合に出れない為、一年の時は公式戦に出れなかったけど、それでもバレーは楽しかった。
そして、中学に入ってから、お母さんに似てきた私は可愛いだなんだと噂されるようになって、上級生が教室をよく覗きに来るようになった。