第3章 彼女の過去
水道の方へ行くと、隅の方でしゃがみ込んでいる莉緒ちゃんがいた。
「莉緒ちゃん、どうしたの?」
声を掛けるけど、返事はなく、顔も伏せていて、表情も見えない。莉緒ちゃんの隣に腰を下ろし、莉緒ちゃんが話してくれるのを待った。
「…早く練習行ってよ。」
「莉緒ちゃんだって、マネージャーなんだからやる事あるでしょ?」
そう言うとまたダンマリ。
「四宮さんの事苦手?」
「…そういうのじゃない。」
「前部活で何かあったの?」
俺の問いかけに莉緒ちゃんは答えなかった。
美人で、人当たりの良さそうな印象ではあったけど、莉緒ちゃんに声を掛ける彼女は冷たく感じた。見下しているというか、蔑んでるような。そして、莉緒ちゃんのこの反応。どう考えても、四宮さんに怯えている。
そこで一つの仮定が浮かび上がった。莉緒ちゃんに女子バレー部に入らなかった理由を聞くなと言った岩ちゃん。チームの一員として、仲間として認められたいと言った莉緒ちゃん。口にするかどうか迷った。が、先に口を開いたのは莉緒ちゃんだった。
「…私、イジメられてたの。」
今にも消えてしまいそうな位小さくて震える声で莉緒ちゃんはそう言った。