第3章 彼女の過去
その後僅差でまっつんの勝利。海の家で大量に奢らされた。海の家で食事を済ませ、海で沢山泳いだせいで、その日はいつもより早く眠りについた。
翌朝、早く寝たせいか、いつもより早く目が覚めて、まだ寝ている三人を起こさないように、そっと部屋を出て、体育館へ向かうと、ボールの音がした。時間はまだ五時を過ぎた頃。こんなに早くから練習してるのは誰だろ?金田一かな?そう思って体育館を覗くと、サーブを打つ莉緒ちゃんの姿。次から次へとサーブを打つ姿が何だか痛々しく見えて、声を掛けるのを躊躇った。すると、莉緒ちゃんの方が先に俺に気付いた。
「及川、おはよう。あれ?もうそんな時間?」
「おはよう。まだ五時だよ。早く目が覚めたから朝飯前に少しサーブ練でもしようかと思って。」
「え?もう五時?」
「莉緒ちゃん何時からここにいるの?」
「さっき来たとこ。」
「さっき来たのに、もう五時って言うのはおかしくない?」
それに何の反応も示さない莉緒ちゃん。
「ねえ、まさか無茶なことしてないよね?」
「してないよ。少し早く目が覚めたから、少しサーブ打ってただけだから。私朝食の支度してくる。」
そう言って体育館を出て行こうとする莉緒ちゃんの手を掴んだ。
「何?」
「莉緒ちゃんだって、俺ら青葉城西の大事なチームメイトなんだから、元気がなかったり、無理してたら心配だし、何か困った事があるなら力になりたいって思う。それは俺だけじゃなくて、皆そうだから、だからなんでも一人で考え込むのはダメだからね。」
一瞬困ったような顔をしたけど、莉緒ちゃんは俺の言葉を聞いて笑った。
「ありがとう。及川は、本当にいい主将だと思うよ。」
「え?何、突然。」
「でも、本当に何も無いから。」
そう言って莉緒ちゃんは体育館を出て行った。
その後、食堂で会った時もいつも通りの莉緒ちゃんで、その様子を見て少しホッとした。