第3章 彼女の過去
海に入ると岩ちゃんにベッタリの莉緒ちゃん。それを取り囲む一、二年。
「いやーなんつーか、俺らって幸せ者だよな。」
「何、マッキーいきなり。」
「どう見たって、この海で一番の美少女と海に来てる訳だよ。去年までのむさくるしさが嘘みたいじゃね?周りの男共から羨ましそうに見られるのってなんつーか優越感?」
まあ、確かに可愛い子は他にもちらほらいるけど、莉緒ちゃんには到底及ばない。声を掛けたそうに周りの男達も莉緒ちゃんを見てるけど、完全に部員達に囲まれた莉緒ちゃんに声をかけるのは不可能。
「莉緒ちゃーん!俺が浮き輪引いてあげるよー!」
そう言ってマッキーは莉緒ちゃんの方へ泳いでいった。
「マッキーも随分莉緒ちゃんに構うね。」
「莉緒ちゃんって、花巻のモロタイプだし、割と本気なんじゃない?」
「え、マジ?」
「矢巾とかも好きなタイプだと思うし、国見は莉緒ちゃんにちょっかい出したりしてるし、そこら辺は割と本気だと思うけど。
俺も莉緒ちゃん可愛いと思うし。」
「え?まっつんのタイプは年上でしょ?」
「まあ、そうだけど、タイプってあくまで理想であって、実際は違ったりするよね。」
にやりと怪しげな笑みを残し、まっつんも莉緒ちゃん達の方へ泳いでいった。
莉緒ちゃんに岩ちゃんを取られるとかそういう話じゃ済まなくなってきてる気がする。いや、でも、まあ、マッキーとかまっつん、国見ちゃんあたりは、バレーと上手く両立していけるだろうけど、矢巾はダメだ。絶対恋愛に夢中になるタイプだし。いや、でも、今名前に上がってない奴らだってきっと莉緒ちゃん狙いの奴はいるだろうし。
「及川どうしたの?」
何も知らない莉緒ちゃんが呑気そうにマッキーに浮き輪を引かれ、俺の方にやってきた。
「莉緒ちゃん、浮き輪は没収!泳げるようになろう!」
「え、何いきなり。」
「及川さんがマンツーマンで指導してあげるから!」
「いや、別にいい。」
「今から競争して、一番長く向こうまで泳げた人になんか好きなもの買ってあげるから、その間莉緒ちゃんは俺と泳ぐ練習!」