第3章 彼女の過去
合宿二日目。今日は一段と暑くて、皆暑さにやられ、結構クタクタだった。そのため、今日は練習を早めに切り上げ、夕方から皆で海で泳ぐことになった。
「目の保養。」
「及川、なんか可愛い子捕まえてこい。」
「ムカつくけど、お前しかいない。」
「ただでさえ暑いのに何騒いでんの?」
振り返ると水着姿の莉緒ちゃん。じゃなくて、日傘をさし、帽子をかぶり、サングラスをかけ、ジャージを羽織って完全武装の莉緒ちゃん。その姿を見て、全員がガッカリしたのが分かった。今回の合宿、皆一番の目当ては莉緒ちゃんの水着姿だったと思う。なのに、この完全武装。普段よりも着込んでて、肌が見えない。
「莉緒ちゃん見てる方が暑苦しいんだけど。」
「私泳ぐ気ないし。」
「にしたって、その格好じゃ暑いでしょ?」
「…暑くない。」
「泳がなくてもいいから、せめて水着になろうよ!」
「だって皆泳ぐでしょ?」
「うん。」
「人避け。」
「莉緒ちゃんも泳いだらいいじゃん!」
「無理なの!」
「莉緒、浮き輪借りてきたぞ。」
そう言って浮き輪を持ってきた岩ちゃん。
「え?まさか莉緒ちゃんカナヅチ?」
「違う!」
ムスッとした表情の莉緒ちゃん。違うと言ってはいるけど、わざわざ岩ちゃんが浮き輪借りてくるくらいだから、泳げないんだろう。
「莉緒を一人で置いとく訳にはいかねーし、莉緒が泳がねーなら俺も泳がねーよ。」
「…わかった。」
岩ちゃんにそう言われ折れた莉緒ちゃんは、帽子とサングラスを外し、ジャージのファスナーを開けた。
ジャージファスナーが開き、莉緒ちゃんのビキニが露になり、俺は反射的に莉緒ちゃんに手を伸ばし、ファスナーを閉めた。
「え?及川何?」
「あれ?」
自分で、自分のした行動の意味が理解出来無かった。
「暑苦しいって言ったくせに何?」
「いや、なんとなく?」
「なんで疑問系?」
そう言って莉緒ちゃんはジャージを脱いだ。露になった水着姿に部員達からおお!と歓喜の声が上がる。部員達だけでなく、周りにいた男達も莉緒ちゃんの水着姿に見とれていた。