第1章 最低最悪な彼女
「え、あの子、可愛すぎじゃないっすか?」
放課後、部活を見学に来た莉緒ちゃんを見て、部員たちが騒ぎだす。他にもバレー部の練習を見にきている女の子達はいるけど、莉緒ちゃんは一際目立ってた。
「はいはい、皆静かに。いつも通り練習に集中。」
俺が手を叩き、そう促すと、皆練習に戻るけど、殆どの部員がチラチラと莉緒ちゃんを見てる。莉緒ちゃんはその事に気付いてないのか、気付いているのかは分からないけど、無表情でぼーっと練習を眺めてる。
「及川さーん、頑張って下さい!」
女の子の黄色い声援に手を振ると、莉緒ちゃんの表情が一瞬険しくなった。
「練習に集中するんじゃなかったのかよボケ!」
岩ちゃんに後頭部を叩かれた。
「ちょっと岩ちゃん、暴力反対!」
「うっせー!」
岩ちゃんは俺を叩くとコートに入り、後輩からのトスを鋭いスパイクで決めると、女の子達は、
「岩泉さん、かっこいいよね。」
「うん。」
なんて声が聞こえてきた。莉緒ちゃんも先程までの表情が嘘みたいにキラキラした目で岩ちゃんを見つめてる。
俺もコートに入り、サーブを決める。そのサーブを見て、女の子達は、「でも、やっぱり及川さんだよね」と口々にする。横目で莉緒ちゃんのリアクションを確認すると、彼女だけが無表情だった。あれ?そこは「及川君素敵!」ってなるとこじゃないの?なんてことを思いながら、サーブを打つが、結局練習中莉緒ちゃんの表情が明るくなることはなかった。