第3章 彼女の過去
「おー!なんだお前ら皆ここにいたんだ!花火すっぞ!」
そう言って花火を両手いっぱいに抱えたマッキーとまっつんと岩ちゃんが体育館に入ってきた。
莉緒ちゃんは岩ちゃん達が来たことに気付いていないのか、ボールを見つめ、動かない。
「はーい!それじゃあ今日はここまでってことで、皆花火行くよー!片付けは特別に及川さんがやっとくから、皆外に出てー!」
岩ちゃんが莉緒ちゃんの異変に気付いたのか、岩ちゃんはすぐに莉緒ちゃんの元に走った。岩ちゃんに声をかけられ、笑顔を見せるも、その笑顔はいつもと違って、なんだかぎこち無くみえた。莉緒ちゃんの初めて見せる、その違和感のある表情に目が離せなかった。
体育館には俺と岩ちゃんと莉緒ちゃんだけ。岩ちゃんは俺がまだ体育館にいるのに気付いてないのか、気付いていたのか分からないけど、そのまま莉緒ちゃんを、抱きしめた。岩ちゃんに隠れて莉緒ちゃんの表情は見えない。莉緒ちゃんは岩ちゃんの背中にしがみついて、そのままその場へしゃがみこんだ。岩ちゃんは莉緒ちゃんの背中をたたき、まるで泣いてる子供をあやしてるみたいだった。
『何も知らないくせに』
あの日、莉緒ちゃんに言われた言葉が頭に響いた。