第3章 彼女の過去
莉緒ちゃんと体育館に向かうと、自主練をしてる奴らがちらほら。
「俺と莉緒ちゃんと3対3やる人ー?」
「え?橋口さんもやるんですか?」
「莉緒ちゃん狙いでの強打はなしってルールでやるよー。」
「やります!」
矢巾、渡っち、金田一、国見ちゃんを入れて3対3をやることになった。チームは、俺、莉緒ちゃん、国見ちゃん対矢巾、渡っち、金田一の組み合わせ。
「てか、珍しいね!国見ちゃんが自主練なんて!」
「はあ。」
相変わらずやる気無さげな国見ちゃん。
「国見ちゃん、莉緒ちゃんにブロックさせる訳にはいかないからちゃんとブロック飛んでよね。」
「私だってブロックくらい出来るわよ。」
「いや、ブロックに莉緒ちゃんが飛んだら、主に金田一が泣くことになるから。」
その言葉にムスッとした表情の莉緒ちゃん。
試合が始まると、想像以上に莉緒ちゃんがよく動く。向こうも莉緒ちゃんの動きに翻弄されてる。莉緒ちゃんは女子にしとくには勿体ないくらいよく跳ぶし、ボールも拾う、かと思えば初めてトスを上げる国見ちゃんにもいいトスをあげる。
女の子にしておくのは惜しい、莉緒ちゃんが男だったら、うちに欲しいくらいなんだけどね。
3対3は俺達のチームの勝利。
その後も組み合わせやメンバーを替えながら試合を続けた。試合中、莉緒ちゃんは生き生きしてて、本当にバレーが好きなんだって事が改めて分かった。
「すみません!」
金田一が拾ったレシーブが乱れ、それを莉緒ちゃんが追う。コートの外からの超ロングセットアップ。あの乱れたボールに追いつき、その乱れが無かったかのように、綺麗に上がったトス。だけど、レシーブをした金田一は反応が遅れ、矢巾がそのトスを捉えようと走るが、そのトスに追いつけず、ボールはそのまま落ちた。
「すみません!」
コロコロと転がるボールを莉緒ちゃんは見つめ、矢巾の謝罪が耳に届いていないようだった。
その姿が、去年の飛雄の姿と重なった。