第1章 最低最悪な彼女
「岩ちゃん、教科書ありがとう。」
現国の授業が終わり、五組へ行くと、先程と同様岩ちゃんにべったりな莉緒ちゃん。俺が教室に入ると蔑んだような瞳で見られる。…視線が痛い。
「莉緒ちゃん、俺なんかした?」
「別に。」
そうは言うけど、明らかに俺にだけ冷たい。いや、俺にだけ冷たいんじゃなくて、岩ちゃんにだけ優しいのか、どっちかわかんないけど。
「俺とだって久しぶりの再会な訳じゃん。」
「一君とは連絡ずっと取ってたもん。」
「え?」
どういう事かと、岩ちゃんの方を見ると、なんでそんなの一々お前に言わなきゃならねーんだよと言いたげな目で睨まれた。俺に秘密で岩ちゃんはこんな美少女と連絡を取ってたなんて、岩ちゃん許すまじ。ここは一つ、俺のかっこいい所を見せて、莉緒ちゃんに、「及川君やっぱり素敵!」って思わせないと。
「ねえ、ねえ、莉緒ちゃん。放課後バレー部の練習見にこない?」
「行っていいの?」
莉緒ちゃんは目を輝かせ、嬉しそうに言った。初めて俺に向けられた嬉しそうな表情に思わずドキッとした。莉緒ちゃんも、バレーをやってる俺を見れば、岩ちゃんよりも俺がかっこいいってわかるはず。