第24章 【番外編】似たもの同士の出逢い(京谷賢太郎)
それから、サークルを転々としていたが、次第に莉緒のいるサークルへの顔出しが増えていった。コイツのプレーをもっと見たいとか、そんなくだらねえ理由でサークルに足を運んでいる自分に少しばかり嫌気がさしていた。だが、サークルに行けば、俺の姿を見つけると、笑顔を浮かべる莉緒を見て、満更でも無いと思ってしまう自分もいた。
「私ね、トス上げるの怖いんだ。」
「は?意味分かんねえ。」
強烈なスパイクを拾うのが怖いって言うなら分かる。だが、トスは返ってきたボールを上げるだけで、怖い事なんて何もねえ。
「私ね、去年まではバレーやってたんだけど、私、チームの皆に良く思われてなくって、大事な大会でヘマしちゃってさ。私が上げたトスを打ってくれるスパイカーがいなくなったの。だから、トスを上げた先にスパイカーがいなかったらって思うと凄く怖い。だからね、リベロに逃げたの。最初にボールを拾うのが私だったら、ボールは繋がるでしょ?」
「…阿呆らしい。」
「…うん、そうだよね。分かってる。」
「トス上げろ。打ってやる。」
そう言うと、驚いたような顔をして莉緒は笑った。
「…やっと言ってくれた。」