第24章 【番外編】似たもの同士の出逢い(京谷賢太郎)
「君さ、体柔らかいよね。スパイク打つ時身体がグインって!ねえ、一回でいいから私のトス打ってみてよ!ね?あ、すみません!一回だけボール上げてくれません?」
近くにいたオッサンに声を掛けると、勝手に話を進めていくソイツに心底腹が立った。その耳は飾りかよ!ちゃんと人の話聞いてんのか!?そう思い乍も強引にコートに引き摺り込まれ、コイツのトスを打つ羽目になった。
「ちっ。一回だけだからな!」
「私からお願いするのはね。多分、一回打ったらまたトス上げて欲しくなると思うよ?」
その自信は何処から湧いてくるのか、怪しげな笑みを浮かべるこの女を気持ち悪いと思ったし、ムカつくと思った。そして、上げられたボールを捉えたソイツのトスは、初めてだって言うのに、気持ち悪い位、息が合って、俺の得意とするコースに上がってきた。今まで打ったどのスパイクよりも気持ち良く反対側のコートに打ち付けられた。
「間近で見ると凄い威力だね…!」
「お前、セッターかよ。」
「ううん、リベロ。」
リベロは守備専門のポジションで、トスを上げる事なんて滅多に無い筈なのに、強豪校のセッターなんかよりもずっといいトスを上げていた。コイツをリベロで使うなんてコイツの学校の監督はグズかよ。そう思ったが、コイツのレシーブを見て納得した。コイツ、レシーブもクソうめえ。まるでボールがあの女に吸い寄せられるように…そして、スパイクの威力を完全に殺し、セッターが上げやすい位置に返球してやがる。