第22章 【番外編】そんなこと、自分が一番分かってた(花巻貴大)
クリスマスイヴ前日、岩泉から買い物に付き合って欲しいと頼まれ、岩泉の彼女のクリスマスプレゼントを買いに出掛けた。中々プレゼントを決められない岩泉。女向けの可愛い雑貨が並ぶショップに身長180近い男が二人そこにいるのは不自然で、痛いくらい他の客からの視線を集めてた。適当に目に付いたストールを手に取ってこれでよくね?と岩泉に聞けば、俺が選んだやつでいいと言ってレジに向かった岩泉。彼女へのプレゼント、俺が決めたヤツでいいのかよ。レジに向かう岩泉を見送り一足先に店を出た俺は、ネックレスコーナーで岩泉が足を止め、そこから一つネックレスを取っていたのを見ていた。なんだ、ちゃんと選べるんじゃねえかよ。なんて思ったのに、三学期、そのネックレスをつけていたのは彼女ではなく莉緒ちゃんだった。
「岩泉、ちょっといいか?」
昼休み、岩泉を呼び出し、視聴覚室へと向かった。そこで岩泉に莉緒ちゃんに告った事を話せば、驚いた顔をしていた。そして、振られたと言えば、安心したような顔をしていた。
「でさ、岩泉。お前莉緒ちゃんの事好きだろ?」
その問い掛けに岩泉は否定の言葉を口にした。ネックレスの事を尋ねても、返ってくる答えはおれが求めてる答えじゃなくて、流石にイライラしてきた。
「いつまでそうやって自分の気持ちに嘘をついてんだよ!?俺らのエースはいつからそんなビビりになった?立石ちゃんと別れたのだって、どうせ莉緒ちゃんの事が頭から離れなかったからだろ!?違うか!?男なら男らしく、自分の気持ちちゃっちゃと認めろよ!」
本当は俺が莉緒ちゃんの隣に居たかった。けど、俺じゃダメなんだ。いつも傍で莉緒ちゃんを守ったきた岩泉じゃねえとダメなんだ。
「花巻カッケーな。」
「そうだよ、俺はカッコいいんだ。今頃気付いたか。」
そう言って視聴覚室を出てった岩泉の背中を見送った。嗚呼、やべえ泣きそうだ。
「…ごめん、聞いちゃった。」
「…んだよ、松川、タイミング悪過ぎ。」
「頑張ったな、花巻。」
松川の前で俺は静かに泣いた。いつかこの気持ちが別の誰かに向けられるようになる日が来るのだろうか。