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【HQ】Egoist

第22章 【番外編】そんなこと、自分が一番分かってた(花巻貴大)


 けど、夏休み、大学生との練習試合を機にそのバランスが崩れた。莉緒ちゃんの為を思って動く及川と、莉緒ちゃんを守ろうとする岩泉。及川に頼まれて訳もわからず、暴れる岩泉を松川と一緒に抑えたが、ブチ切れた岩泉は俺と松川二人がかりでも手に負えなくて、次の駅に止まった時、迷うこと無く下車した岩泉は莉緒ちゃんと及川を追って走り出した。そんな岩泉の背中を見て岩泉には勝てねえやと思った。なのに、青城祭の後、岩泉に彼女が出来た。それを知った時、何やってんだよ岩泉、馬鹿かよ。って思った。お前が好きなのは莉緒ちゃんだろうが。どうせ上手くいきっこないって思ってたのに、二人は別れなかった。部活を引退してから毎日彼女を家まで送って、彼女に弁当作ってもらって、順調そうな二人。それを辛そうに見つめる莉緒ちゃん。俺だったら莉緒ちゃんにそんな顔させねえのに。俺だったら莉緒ちゃんの事大事にすんのに。


「莉緒ちゃん。」
「何?」
「俺、莉緒ちゃんの事好きだわ。」


 自分の気持ちを隠し通す事なんてもう出来なかった。今の関係は心地いいし、五人でいる時間は楽しかった。けど、それだけじゃ満足出来なくなってた。


「…ごめん。私、花巻の事、そんな風に考えた事なくて…。」


 結果は答えを求めずとも分かりってた。莉緒ちゃんのピンチに駆けつけることも出来ないし、莉緒ちゃんが安心して泣ける場所でもない俺が、及川と岩泉の間に割って入っていけるなんて思ってなかったし、そんな事自分が一番分かってた。


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