第21章 【番外編】恋に落ちる(国見英)
「国見どいて。」
橋口さんに押しのけられた瞬間、橋口さんはさっき梨花が橋口さんにしたのと同じように梨花の顔に水をかけた。その突然の出来事に梨花は呆気を取られマヌケな顔をしていた。それがあまりにもおかしくて、笑っていい所じゃないというのは分かっていたのだけど、思わず吹き出してしまった。それを合図に梨花は再び怒り出す。
「な、なにすんのよ!」
「先に手を出したのはそっちじゃん。やられたらやり返すに決まってんでしょ。」
高校三年生、俺らより二つ年上の橋口さん。やられたらやり返すって、子供かよ。彼女の予想打にしない行動に思わず笑いが溢れた。その俺の笑い声が癇に障ったのか、梨花は再び怒り出した。怒りの矛先を向けられている橋口さんは、至って冷静で、それがまたおかしかった。
「ああもう最悪!アンタなんか死んじゃえ!」
梨花は手を振り上げた。それを咄嗟に掴むと、梨花は驚いたような顔をした。
「…そういうのやめてくれる?迷惑だから。それと俺と橋口さんは梨花はが思ってるような関係じゃないから。まあ、仮にそうだったとしてももう俺達別れてるんだし、梨花には関係のない話だよね?」
「───…っ!英の馬鹿!」
俺の手を振りほどいた梨花はそのまま店を出て行った。
「橋口さん、すみません。」
「なかなか強烈な子だったね。」