第18章 大好きな君に伝えたいことがあるんだ(岩泉視点)
『岩ちゃん追っかけて!』
そう言って及川に背中を押され、俺は莉緒を追い掛けた。嗚呼、クソっ!訳わかんねえ!及川と莉緒が付き合ってなかった。あの日のキスは及川が無理矢理したものだと聞いて、莉緒を傷付けた及川に腹が立って及川を殴った。そして及川はキスしただけじゃなく、莉緒の信頼を裏切るような言葉を莉緒に言った。
『俺じゃダメなんだ!』
莉緒を傷付けておきながら、それは莉緒を好きだという意味の言葉。
「莉緒!」
莉緒に追い付き、莉緒の腕を掴んだ。が、莉緒は俯いたままこっちを見ようとはしなかった。
及川に聞かれ、それに答えた俺の言葉を莉緒は聞いただろう。こんな風に気持ちを伝える事になるとは思いもしてなかった。でも、自分の気持ちを殺してまで俺の背中を押してくれた及川と花巻。…伝えるんだ。結果はどうであれ、ちゃんと俺の気持ちを。
「莉緒…好きだ。」
口に出した言葉は柄にもなく震えていた。
「…夢、じゃないよね?」
「…嗚呼。」
及川を殴った手も、及川に殴られた頬も痛む。夢であってたまるか。
「私も、一君が好き…。」
その言葉を聞いたと同時に俺は掴んだ手を引き寄せ、莉緒を抱き締めた。
「俺の隣で笑ってて欲しい。もう、誰にも傷付けされたりなんかしねえ。莉緒の事、ぜってー守る。だから、俺と…付き合って欲しい。」
「…うん。」