第17章 大好きな君に伝えたい事があるんだ
莉緒ちゃんから事情を聞いた岩ちゃんがいつ怒鳴り込んでくるかと待ち構えていたが、その日岩ちゃんがウチに来ることはなかった。そして次の日も。連絡すら来ないし、もしかして俺って、話したくもないくらい嫌われた…?そんな不安が過ぎった。怒られる事も殴られる事も覚悟出来てた。いや、違う、それを望んでた。それで許される訳じゃないけど、岩ちゃんに怒られれば救われたような気がする。そう思ったからだ。その結果、お前とは縁を切るなんて言われても、それを受け入れようと思っていたのに。
あの岩ちゃんの表情から察するに、岩ちゃんも莉緒ちゃんの事を好きだったんだと思う。大好きな莉緒ちゃんと岩ちゃんが恋人同士になれるなんて、俺が最初に望んだ結末じゃないか。でも、その大好きな二人の傍にいれないことが悲しくて仕方なかった。自分で壊してしまったのに、俺はなんて自分勝手なんだろうか。
「なるほどね。」
俺は今自分がおかれた状況に一人耐える事が出来ず、まっつんに相談した。聞いてほしいことがあると言えば理由も聞かずに、飛んできてくれた。そして事情を説明すれば、まっつんは特に驚いた様子もなく、普段通りだった。
「…驚かないの?」
「お前らの気持ちなんかとっくに気付いてたよ。俺も花巻も。」
「嘘でしょ!?」
「もっと言えば、バレー部の奴は皆気付いてたと思うよ。あ、金田一以外は。」
衝撃的な事実をいつもと変わらぬ口調で話しながら、コーヒーを口にするまっつん。
「まあ、莉緒ちゃんにキスしたってのは驚いたけど。」
そうは言うが、まっつんは全く驚いた素振りを見せなかった。