第16章 恋心の行方(岩泉視点)
日誌を出して直ぐ教室に戻るつもりだったが、先生に呼び止められ、思いの外長く職員室に留まることになった。
花巻に気付かされた莉緒を好きだという気持ち。いざ伝えるとなるとそれは勇気のいるもので、中々それを踏み出せずにいた。が、俺らが一緒にいれる時間も後少し。卒業式が終わったら莉緒に気持ちを伝えよう。莉緒は及川を好き…なのかもしれない。が、それでもいい。それでも、俺の気持ちをちゃんと言葉にして莉緒に伝えようと決めた。が、教室に戻ると、誰もいない教室でキスをする二人を見てしまった。それに動揺し、物音をたてた俺は二人の視線を集めた。
莉緒が好きだ。
でも、その気持ちに気付くのが遅すぎた。もう莉緒は及川のモノになっていた。いや、気持ちに気付くのが早くても、莉緒が及川を好きだというのなら、そんなの遅かろうが早かろうが俺が振られるという結果は同じ。
いたたまれなくなり、逃げるようにして教室を出た。
莉緒と及川がキスをしてる姿を見て、やっぱり二人はお似合いだと、そう思った。二人の間に俺が入り込める隙なんてハナからなかった。折角花巻に背中を押してもらったのに、気持ちを伝える前に終わってしまった。