第15章 恋心の行方(ヒロイン視点)
「…悪かったな。」
「え?」
「二人が付き合ってんの全く気付かなかった。」
違う、違うよ…一君。
「俺、そういうの疎くってさ。今まで邪魔して悪かったな。及川と帰るんだろ?俺は一人で大丈夫だから。気にすんな。」
ぽんぽんと頭をたたかれ、その温もりが離れた時、少し寂しそうな表情をした一君。
「じゃあな。」
遠くなっていく一君をただ黙って見つめることしか出来なかった。
まるで私の涙を隠すかのように突然降り出した雨。まだ寒さが残る中振りつける雨は、体だけでなく、私の心までも冷やしていくようだった。
違うよ、一君。私が好きなのは一君なんだよ。でも、それと同じ位、仲のいい二人の姿を見るのが好きだった。───もう、その気持ちを伝える事さえ許されない。