第13章 恋、気付く時(岩泉視点)
そしてそんな気持ちを抱えたまま年が明けた。初詣に行く約束を立石としていたが、こんないい加減な気持ちのまま立石に会っていいのか正直迷っていた。曲がった事は嫌いだし、いい加減な態度もそう。立石の事を考えればそれと同じ、いや、それ以上に莉緒の事が頭を過ぎる。…潮時なのかもしれない。立石にこんな状態のまま会うなんて気が引けたが、最後まで俺と向き合ってくれた立石に直接会って、ちゃんと話がしたかった。それがせめてもの誠意だと思った。
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」
そう言って笑顔を浮かべ頭を下げる立石の首には俺がクリスマスにプレゼントしたストールが巻かれていた。その立石の手を引いて、一緒に初詣に出掛けた。賽銭を済ませ、お守りを買い神社を出た。そして近くの公園に行き、ベンチに腰を下ろした。楽しそうに話をする立石に別れ話を持ちかけるのは気が引けた。だが、これ以上引き伸ばしてはおけない。
「立石…別れよう。」
「私…何か岩泉さんの気に障るような事…しましたか?」
「そうじゃねえ。立石はいい子だし、こんな俺に良く付き合ってくれてたと思う。…俺には勿体ねえ。」
「…そんなことありません。」
「いつだって真っ直ぐ俺を見てくれていた立石の気持ちに応えたいと思ったし、応えようと思った。…好きになれると思った。…だけど、ごめん。立石の事は好きだけど、それは立石と同じ好きじゃねえ。それに、俺はお前が思ってくれてる程いい奴じゃねえんだ。」
「…嫌です。私、岩泉さんと別れたくありません!」
その言って立石は泣いた。そんな彼女に手を伸ばす事が出来なかった。目の前で泣いてるのは立石なのに、どうしてか莉緒の姿が思い浮かぶ。
「…ごめん。」
泣いてる立石の隣にただ黙って隣にいる事しか出来ない自分。そんな自分が心底嫌で堪らなかった。二人きりの公園に立石の鼻を啜る音だけが響いた。