第13章 恋、気付く時(岩泉視点)
すっかり日も暮れ、バスに乗り地元へと帰り、立石を家まで送り届け、家に帰ると、見慣れない靴が二足。
「おかえりなさい。」
そう言って迎えてくれたのは莉緒の母ちゃんだった。
「お久しぶりです。」
「偶然陽子ちゃんと会っちゃってね、お邪魔しちゃった。」
そう言って笑う姿は莉緒そっくりだった。リビングに入ると、莉緒も一緒に居て、並べられた料理を食べている所だった。
「一君、おかえりなさい。」
「あら、帰ってくんの早かったわね。てっきり今日は帰って来ないのかと思った。」
「帰って来るに決まってんだろ。」
「折角のクリスマスなのに。彼女はどうしたのよ?」
「送ってきた。」
「え?一君彼女いるの?」
「そうなのよ。私、娘には莉緒ちゃんが欲しかったんだけどさー。まあ、莉緒ちゃんもこんなゴリラみたいな子嫌よね。」
「…いえ、」
そう言って笑う母ちゃんに少し腹が立った。言い返したって意味は無い事は分かってたから、そのまま黙って莉緒の隣に座り、並べられた料理に手を伸ばした。陽気に喋る母ちゃん達の会話を聞き流し、腹いっぱいになった所で部屋へ戻った。