第13章 恋、気付く時(岩泉視点)
そして迎えたクリスマスイブ。昨日買ったプレゼントを持って出掛けた。立石と待ち合わせした駅に向かった。約束の時間より早く着いたのに、立石は既に待っていて、立石の姿を見つけ、俺は立石の元へと足を早めた。
「悪い、待たせた。」
「いえ、私も今さっき来た所なので。」
「そんじゃあ行くか。」
立石の手を取ると、いつも温かい手は少し冷たくなっていた。その手の冷たさに、立石が長い時間俺が来るのを待っていたという事が分かった。
バスに乗り、仙台にある遊園地へと向かった。ガキの頃はよく及川家と家族ぐるみで行っていたが、中学、高校とバレーばっかりで、来たのは小学生以来だった。園内に入ると、及川がよく鼻歌で歌ってるあの曲が流れていた。
「どれから乗ります?」
「取り敢えずジェットコースターだな。」
そう言って、ジェットコースターから始まり、様々なアトラクションを楽しんだ。遊園地なんて久しぶりに来たけど、案外楽しいもんだな。
「…岩泉さん、すみません。」
「どうした?」
「ちょっと、乗り物酔いが…。」
立石の顔は青白くなっていた。
「取り敢えずそこ座るか。」
「…すみません。」
「俺、水買ってくるわ。」
立石をベンチに座らせ自販機に水を買いに走った。思い返してみれば、次から次へとアトラクションに乗るにつれ、立石の顔色は悪くなってった気がする。楽しいって気持ちが勝って、全然それに気付けなかった。
買ってきた水を立石に渡し、立石はそれを飲んだ。そして、俺の肩に頭を置いた。
「…悪い、こういうの苦手って気付けなかった。」
「いえ、楽しそうにしてる岩泉さんを見れたので私も楽しかったです。」
立石は本当にいい奴だと思う。俺には勿体無い位。そんな立石がなんで俺を好きになってくれたのか分かんなかった。特に接点があった訳でもねえし、バレー部の試合を見に来てって言うなら、それは俺なんかよりも及川の方がカッコいいと思うし、立石に好意を持たれる理由が俺にはない。そう思っていたし、現に今も思ってる。