第13章 恋、気付く時(岩泉視点)
二学期が終わり、立石と初めて過ごすクリスマスが迫って来ていた。こういったイベント事を彼女と過ごすのは初めてで、柄にもなくそういった雑誌を読んだりした。雑誌を俺の部屋で見掛けた及川に、岩ちゃんがこういうの買う日が来るなんて思わなかったと馬鹿にされた。ムカついたから取り敢えず殴っといた。
「てか、岩ちゃん。いつまで沙耶香ちゃんと付き合うつもりなの?」
「どういう意味だよ?」
「沙耶香ちゃんの事ちゃんと好きなの?まあ、いい加減な気持ちで付き合うって決めた訳じゃないだろけどさ、沙耶香ちゃんに気持ちがないなら、ずるずる付き合っても無意味だよ。岩ちゃんは律儀な正確だし、ちゃんと沙耶香ちゃんと向き合おうと思ってるのかもしれないけど、愛情と情は別物だからね?」
「んなの分かってるっつーの!」
立石の事は可愛いと思う。が、それは後輩に対して抱く感情と同じ。それ以上の感情を俺が立石に抱く事はなかった。でも、立石と一緒に過ごす時間が増えていく事で、それが愛情に変わるんじゃねえかって思ってる。まあ、今はまだその段階じゃねえってだけで。
「…つーか、お前はどうなんだよ?」
「へ?俺?」
「莉緒と一緒に過ごすんだろ?…クリスマス。」
自分で口にした言葉なのに、その答えを聞くのが嫌で堪らなかった。
「なんで?そんな訳ないじゃん。」
「は?」
「え?」
てっきり莉緒は及川と一緒に過ごすモンだと思ってた。だから予想外の返事に驚いたが、その答えに安心した。
「莉緒ちゃんはただの友達だよ。」
「…そうか。」
「莉緒ちゃんは四宮さんと遊ぶって言ってたよ、クリスマス。」
ただの友達、それは言ったのに、しっかり莉緒の予定を把握してる及川。それに安心した筈の気持ちはまた複雑な気持ちへと変わった。