第13章 恋、気付く時(岩泉視点)
「及川、ここなんだけどさ、」
向かい側に座る及川に問題集を指差し、及川が莉緒が指さした問題集を覗き込んだ。
「ああ、ここはね、」
「莉緒には俺が教える。」
莉緒の手から問題集を取り、問題文に目を通した。
「い、いいよ一君。私皆より全然勉強出来ないし、一君の邪魔になっちゃう。」
遠慮なのか、それとも俺ではなく及川に教えてもらいたいのか、そう言った莉緒にまた湧き上がってくる複雑な感情。
「教えるのは自分の復習にもなるし遠慮すんな。」
そう言って笑ってみせたが、いつもみたいに笑えてないような気がした。
「…それじゃあ、お願いします。」
少し遠慮がちにそう言った莉緒。及川に教えてもらいたいと言われなかった事に対し、少し安心した。今までずっと隣にいて、この距離間が普通だったのに、この距離が凄く久しぶりに感じた。まあ、暫く俺自身莉緒の事を避けてたし、立石と付き合うようになってから莉緒に避けられてるのも分かってはいた。だから、こうやって莉緒の隣にいれることが嬉しかった。そして、それと同時に、及川がいるからもう大丈夫だよ。そう言われる日が来るのかもしれない。そう思うと怖くて堪らなかった。