第13章 恋、気付く時(岩泉視点)
「それなら頼む。」
その俺の返事に、また嬉しそうに笑う立石を見て可愛いと思ったし、このまま立石の事を知っていけば、好きになれるかもしれないと思った。
話が一段落つくと、頼んだ料理が運ばれてきた。既に昼食は済ませたという立石は、俺が飯を食っている間、氷が溶け、少し薄くなったミルクティーを飲みながら特に何か話をする訳でもなく、俺が食い終わるのを待ってくれていた。
「そんじゃあ帰るか。送ってく。」
「はい。」
俺も立石もあまり喋る方じゃねえし、特に共通の話題があるって訳じゃねえから会話が途切れる事なんてしょっちゅうだったが、不思議とその沈黙に居心地が悪いとは感じなかった。そして、不意に手を握られ、ビックリして立石を見ると、顔を真っ赤にして、ダメでしたか?と消えてしまいそうなくらい小さな声で尋ねてきた。それに俺は構わねえと言って、その手を握り返した。嬉しそうに笑う立石を見て、大事にしていきたいと思う気持ちは勿論あったが、それ以上に、今まで繋いでいた少し体温の低い莉緒の手の感触を忘れてしまうような気がして、複雑な気持ちになった。