第13章 恋、気付く時(岩泉視点)
立石と約束したカフェに行くと、既に立石は席に着いていた。
「悪い、待たせたな。」
「いえ、私も今さっき来たところです。」
立石の向かい側に腰を下ろし、注文を済ませ、本題に入る。
「昨日は悪かったな。返事出来なくて。」
「…いえ、私こそ大変な時に連絡してすみませんでした。」
昨日準決勝が終わってすぐ立石から連絡が来ていたが、負けたって事もあって返事をする気になれなかった。一日経って、大分落ち着きはしたが、まだ心の中に悔しさや心残りはあった。本音を言えば、まだアイツらとバレーをやっていたかったし、白鳥沢とも戦いたかった。そして、あの日及川と掲げた〝打倒白鳥沢〟。その目標を遂げたかった。莉緒を全国に連れていく。その気持ちも強くあった。たった一日でそれが俺の中から消える事はないし、これから先も後悔として一生付き纏うだろう。
「昨日で俺は部活引退した。」
「…はい。」
「今まで部活ばっかで時間作ってやれなかったけど、これからは出来るだけ時間作る。まあ、部活引退したっつっても、受験生だし、受験勉強もあるから、そんなには作ってやれねえと思うけど。」
付き合ったはいいが、一緒に出掛けたのはあの一回きり。そしてこれが二回目。及川や松川、それに花巻に彼女が居た時、部活ばっかでつまらないと言われ振られた話を幾度と無く聞いていた俺は、自分自身もそうなると思っていた。彼女が出来たからと言って彼氏らしい事を何一つやれてない俺に対し、立石は文句の一つも言わず俺との関係を続けてくれている。付き合うと決めたからには、ちゃんと立石と向き合いたい。立石が俺を見てくれてる分、ちゃんとそれ相応の態度で示したい。
「だから、月曜日からは送ってく。」
「いいんですか?」
「ああ。」
立石はその俺の言葉に喜んだ様子だった。立石の喜ぶ顔を見て、少し安心した。その反応を見て、変わらず好意を向けられているのだと分かったからだ。
「あの、ご迷惑じゃなければ…なんですけど、」
「なんだ?」
「岩泉さんのお弁当、毎日私が作る…っていうのはダメですか?」
「構わねえけど、大変じゃねえか?」
「いえ!私、料理作るの好きだし、岩泉さんに食べてもらえるなら嬉しいです。」