第13章 恋、気付く時(岩泉視点)
そしてファイナルセット、21-19。セットカウント3-2。烏野が白鳥沢を降した。
「ウシワカ野郎はもっと悔しそうな顔しろっつーんだよ。」
「…影山、良い仕事しやがるな…。」
及川の目の前で影山を褒めるのはあれかと思ったが、言葉にせずにはいられなかった。
「…岩ちゃんも気付いた?
恐らく戻ってきた眼鏡君から何らかのブロックの指示が出た。多分対ウシワカの〝ストレートを締めろ〟とかかな?だから飛雄はサーブ後クロスに居たチビちゃんと咄嗟に場所を変わった。西谷君がいなかったからね。」
「あと土壇場での嫌な返球な。さすがお前の弟子だわ。」
「弟子じゃねーし!!
そんで極めつけ…いつもと違う事をやりに来たチビちゃんにちゃんと合わせた。ムカつく程見えてやがる。」
「──まあ、その〝良い仕事〟の前提にあるのは一年眼鏡のブロックだけどな。」
「──それにしてもチビちゃんはトスを上げてみたくなるスパイカーだね…。飛雄が振り回されるワケだよ。
さー、さっさと帰んべ帰んべ!!」
及川に背中を押され、そのまま体育館を出た。観客席を離れる時、莉緒と四宮がいた席を見たが、既に姿はなかった。
「俺これから用事あるから。」
「何?まさかデート?」
「…ちげーよ。」
違うとは言ったものの、立石と会う約束をしてたのは事実。昨日連絡くれてたのに、そのまんま放置してたし、流石に心配して連絡くれたのに、そのままにしとく訳にはいかねーしな。
「…まあ、楽しんできて。」
「ちげえっつってんだろうが!」