第13章 恋、気付く時(岩泉視点)
翌日、決勝戦を見に一人仙台市体育館へと向かった。一応及川も誘ったが、ムカつくからいかない。そう言って断られた。
俺が体育館に着いた時には既に一セット目が終わっていて、二セット目に入った時だった。そして体育館に入ってすぐ、前列の席で試合を観戦する莉緒と四宮を見つけた。一緒にいたのが及川じゃなかったのに何故か安心した。が、莉緒の隣にいる四宮がいるのを見るのは複雑な気持ちだった。俺にとっての四宮はあの日莉緒に向かって暴言を吐いた人物で、莉緒をイジメていた張本人。アイツの事を思い出せば腹立つ事ばっかりだし、いい気はしなかった。でも、莉緒が許すと決めたなら、それに口出しする権利はない。
迎えたファイナルセット、観客席の後列で変装のつもりなのか珍しく眼鏡を掛けた及川を見つけた。
「…何だ及川。居たのかよ。どっちが勝ってもむかつくから行かねーつってたろ。」
「どっちが勝ってもどっちかの負っ面は拝めるからね!」
「うんこ野郎だな。」
「悠長にイジけてらんないんだよ。」
真剣に試合を見つめる及川の隣に腰を下ろした。
「ブレ────イク!!!」
烏野がブレイクを決め、烏野のマッチポイント。そして、白鳥沢二回目のタイムアウト。
「ほんっと雑食だな烏野。眼鏡のブロードなんて初めて見たぞ。囮だけど。」
「俺達は完成度の高い時間差攻撃を易々と捨てられないし、白鳥沢は個人の強さを極めるスタイルを曲げない。それで今強豪と呼ばれてるわけだしね。でも多分烏野には〝守るべきスタイル〟なんて無いんだ。〝強豪〟って言われた時代にはあったのかもね。だから新しい事に手を伸ばす事に躊躇がない。あの奇跡みたいな神業速攻でさえすぐに捨てて新しくしてきた。古く堅実な白鳥沢。新しく無茶な烏野。どっちが勝ってもむかつくからどっちも負けろ。」
珍しく長々と語り出したと思ったら、やっぱり及川は及川だった。
「うんこ野郎だな。」
「てか、そのうんこ野郎ってやめてくれる!?」
「〝クソ野郎〟とどっちが良いか選べ。」
「じゃあうんこかな!!!」