第13章 恋、気付く時(岩泉視点)
あの後、結局片付けを止めて、また皆でバレーをした。そしたら案の定見回りに来た先生に怒られた。学校を出た時には既に外は真っ暗だった。
「お前は多分じいさんになるくらいまで幸せになれない。」
「!?何!?イキナリ何の呪いなのさ!?」
「たとえどんな大会で勝っても完璧に満足なんてできずに一生バレーを追っかけて生きていく。めんどくせえ奴だからな。」
「こんな時でも悪口挟むね!!」
「でも迷わず進めよ。」
及川は東京の大学から推薦が来てる。及川自身がそれを口にした訳じゃねえが、そんなモンは言われなくたって分かるし、気付く。俺は上京するつもりは無い。だから、及川と同じチームでバレーをするのはこれで最後だった。
「お前は俺の自慢の相棒でちょうスゲェセッターだ。この先チームが変わってもそれは変わんねえ。でも戦う時は倒す。」
「…望むところだね。」
ガキの頃からいつも隣にいて、いつも俺にトスを上げるのは及川だった。が、次一緒にバレーをする時は、同じコートじゃねえ。コートの向こう側だ。
拳を握り、その拳を及川と合わせた。その拳から多分、俺の気持ちは伝わったと思うし、及川の気持ちも伝わった。
こうして俺と及川が同じチームとしてボールを繋ぐバレーは終わりを告げた。