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【HQ】Egoist

第13章 恋、気付く時(岩泉視点)


 荷物を運び終わり、バスに乗った。


「あれ?まだ莉緒ちゃん来てない?…俺もっかい見てくる!」


 てっきり及川と一緒だと思っていた莉緒。バスを飛び出した及川に続いて俺もバスを降りた。それに続いて京谷もバスを降りた。
 莉緒の奴、一人で行動すんなって散々言ったのに何やってんだ…!
 俺は昔から莉緒を見つけるのが得意だった。何となく、こっちの方にいる。それが不思議と今回も分かった。そして、莉緒を見つけた。が、莉緒は一人じゃなかった。俺の視線の先には泣いている莉緒を抱き締める及川の姿があった。それを見た瞬間、またあの時と同じ痛みが俺を襲った。いつからか、泣いている莉緒の傍にいるのは俺じゃなく、及川になっていた。そこにいたのはいつも俺だった筈なのに。今まで抱いたことのない激しい劣等感に見舞われた。そして、そんな二人に声を掛ける勇気もなく、俺はそのままバスに戻った。暫くすると、京谷も戻ってきて、それに続いて及川に手を引かれ莉緒も戻ってきた。戻ってきた莉緒は既に泣き止んでいたが、目は赤く腫れていた。俺を信じて選手である事を辞めた莉緒の思いも背負ってコートに立った。だが、負けた。そんな莉緒になんて声を掛けていいのかも分からねえし、さっきの及川とこの事もあって、俺は何も言えなかった。莉緒も俺に声を掛ける事なく、京谷の隣に座った。俺の隣だって空いてんだけど…なんて思ってたら、及川が座った。


「…何岩ちゃん?」
「あ?」
「そんなあからさまに嫌そうな顔しなくたっていいじゃん!」


 別に今のはそんなつもりじゃなかったんだけど、及川がそれを口にするくらい俺は不機嫌そうな顔をしてたらしい。


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