第13章 恋、気付く時(岩泉視点)
「寄越せェェェエ!!!
影山のセットアップ。こんな所で終わらせて溜まるか…!そう思って京谷、金田一と共に跳んだブロック。日向のスパイクは金田一と京谷のブロックに阻まれた。そして、後ろを振り返ると、及川がレシーブしたであろうボールはコートの外へ転がっていた。
「────よっ、しゃあぁあああああああ!!」
そして、試合の終わりを告げるホイッスルが鳴った。
セットカウント 2-1
俺達は負けた。
「ありがとうございました───!!!」
相手チームに頭を下げ、影山と握手を交わしたが、なんだかまだ試合が終わったという感覚に実感がなかった。
そして、監督、コーチ、莉緒のいるベンチの方へ。
「…何を言おうとも結果は結果のまま。悔しさが薄まる事も無い。後悔の残るプレーもあるだろう。それでも先ずは言わせてもらいたい。よく戦った。」
その監督の言葉に金田一と渡は涙を流した。涙こそは流さなかったけど、他の連中も歯を食いしばって必死に耐えている様子だった。
「観客席に挨拶。」
そう言って観客席に駆け出して行くチームメイト。俺もそれに続こうと足を動かすが、鉛みたいに重くて、走る事が出来なかった。
及川からの完璧なあのトス、入ってきたタイミングだってバッチリだった。────あれを決められず何がエースだ!!!
悔しくて、情けなくて、堪えていた筈の涙が一気に流れてきた。すると、背中を誰かに強く叩かれた。俺の背中を叩き、前を歩いて行く及川。続いて花巻と松川に同じように背中を叩かれた。俺一人が悔しいんじゃねえ。ぐっと涙を堪え、観客席の前に並ぶ花巻の隣に並んだ。
「ありがとうございました!!!」
コートを出ると、誰よりも涙で顔面ぐっちゃぐちゃの温田が飛び出してきた。
「お前ら最高だった…!!強かったっ…!!もう優勝でいい!!優勝だった!!」
「温田何言ってる!?」
「おちつけっ。」
興奮を抑えられない様子の温田の両腕を志戸と沢内が抱えた。
「くそぅ…温田っちを見ると冷静になってしまう…。」
「それな。」
「ハジメェー!!」
志戸と沢内の手を振りほどいた温田に思いっきり髪をぐしゃぐしゃにされた。