第13章 恋、気付く時(岩泉視点)
伊達工を降し、準決勝に駒を進めた俺達。相手は烏野。
コートに入り、各々ウォームアップを始めた。及川、試合前から影山に絡んでた。…二つも下の奴相手にほんとみっともねえな。横目で莉緒を見ると蔑んだような瞳で及川を見てた。
そして、花巻とのラリー中、俺のスパイク、花巻のレシーブが乱れ、烏野のコートの方に。
「危ない!!」
ボールの先には烏野のマネージャー。と、その近くに何故か、矢巾。なんで烏野のコートの方にいんだよ。
バチンという激しい音が響いた。
もう一人のマネージャーがボールを弾いた。
「ほらよ。」
「…どうも。」
複雑な表情でボールを抱え、戻って来た矢巾を莉緒が呼んだ。笑顔だけど、あれは完全に怒ってる時の顔だ。
「矢巾。今の何?」
「えっと、その、」
「ナンパに来たのかな?矢巾は。」
「いや…違い、ます。」
「次ふざけた事やったら帰りバス乗せないよ。」
「…はい。」
「まあ、そうカリカリすんな莉緒。」
「一君は後輩に甘過ぎだよ。」
そう言ってムスッとした莉緒。
「莉緒。絶対全国連れて行くからな。」
「うん。信じてるよ。」
そう言って笑う莉緒の頭を撫でた。なんだかこうやって莉緒に触れるのが久しぶりな気がして、触れた手を離すのが惜しいと感じた。