第13章 恋、気付く時(岩泉視点)
及川の家のチャイムを鳴らすと、オバチャンが出てきて、
「あら一君いらっしゃい。徹なら部屋にいるわよ。」
その言葉に少しホッとした。まだ帰ってきてなかったら、莉緒と一緒だったら、と思った。莉緒と既に別れた後だと知って安心感を覚えた自分になんで俺安心してんだ?と疑問も浮かんだが、その疑問の答えを出す前に及川の部屋へ向かいドアを開けた。
「邪魔するぞ。」
寝転ぶ及川の隣に腰を下ろした。
「何、岩ちゃんどうしたの?デートは?」
「終わった。」
「え?もう?」
「そういうお前こそ、莉緒どうしたんだよ?」
「ちゃんと家まで送って行ったよ。」
「え、岩ちゃん、わざわざそれ聞きに?」
及川は驚いた様子だった。自分でも、なんでこんなに莉緒の事が気にかかるのか不思議でならなかった。別に今までだって莉緒がバレー部の奴と出掛ける事だってあったし、これが初めてな訳じゃない。
「…お前と二人で出掛けるなんて今まで無かったから何かあったんじゃないかと思っただけだ。…莉緒泣いてたし。」
「まさか莉緒ちゃんの事心配で彼女と早く別れたの?日曜日に部活が休みなんて機会早々ないのに勿体無い。」
最もな事を言う及川に、そうだな、なんて言ってはみたが、心の中ではそうだな、なんて思えていなかった。これ以上及川と話すこともねえし、そう思って及川の部屋を出た。…一体俺は何しに来たんだ。