第13章 恋、気付く時(岩泉視点)
及川の姿が見えると、莉緒は俺の手を離した。
「勝手にいなくなってごめんなさい。デートの邪魔してごめんね。」
「いえ。」
「及川、莉緒から目を離すなっていつも言ってんだろ!」
そう言って及川を叱ると、及川は莉緒の手を握った。それを見て、何故か鋭い何かに突き刺されたような、じんわりと広がっていくような痛みがした。
「うん、ごめん。次から気を付ける。二人共邪魔してごめんね。」
〝次から気を付ける〟その言葉は、また莉緒と二人で出掛けるという意味を指していて、その言葉がやけに引っかかった。気を付けるつってんだからそれでいい筈なのに。そして、及川は莉緒の手を引いて足早に去って行った。
「…岩泉さん。」
「あ、わりぃ。」
立石に名前を呼ばれハッとした。今俺は立石といるんだ。
「行くか。」
立石の手を取ったが、先程莉緒と繋いだ手と違うその手に違和感は膨らむばかりだった。
そして、特に目的があった訳でもないし、元々こうやってブラブラするのが好きな訳でも無かったため、立石を家まで送り、俺も家に帰ろうと思ったのに、向かったのは及川の家だった。