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【HQ】Egoist

第13章 恋、気付く時(岩泉視点)


 立石と手を繋いで歩いていると、その先に及川の姿が見えた。その及川は酷く慌てた様子で、立石の手を離し、及川の元へ駆け寄り声を掛けると、莉緒とはぐれたと話した。休みの日にわざわざ二人で出掛けるなんて、やっぱり、なんて思うよりも先に足が勝手に動いた。


「え?岩ちゃん!?」
「立石のこと頼む!」


 莉緒が何処に行ったのかなんて検討もつかないし、この人混み。でも、不思議とこっちに行ったら莉緒がいるっていうのが分かった。あの雪の日と同じように。夏祭りのあの時と同じように。
 そして、前方に莉緒の手を掴んでいる男達の姿を見つけた。


「莉緒に触んな!」


 強引に莉緒の体を自分の方に引き寄せた。俺の中にすっぽりと収まる莉緒は、俺が来たことに驚いたようだった。莉緒の手を掴んでいたソイツらは、俺の姿を見るなり舌打ちをし去っていった。


「大丈夫だったか?」


 莉緒は泣いていた。莉緒を泣かしたアイツらに腹が立った、というよりは、もっと早く莉緒の傍に行ってやれなかった自分に腹が立った。莉緒の涙を掬うと、また莉緒は泣いた。


「行くぞ。」


 莉緒の手を引いて、来た道を戻った。少しだけ体温の低い莉緒の手に少しだけ安心した。この手を離したくないと思うのは、やっぱり莉緒が俺に取って特別な存在だからだろうか。


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