第2章 彼女の素顔
保健室に行くと、やっぱり突き指をしてたみたいで、テーピングしてもらった。そんなに酷くないからすぐ治るだろうってことで、放課後も部活には参加した。突き指が悪化するのも困るし、今日はボールには触らず、筋トレ、ロードワークのみ。
練習中、莉緒ちゃんはいつも通り。いつもなら莉緒ちゃんにちょっかいだしに行くけど、例の件があって、莉緒ちゃんに声をかけずらくて、声をかけるのをやめた。
「及川。指、どうだった?」
筋トレをしてると、莉緒ちゃんから声をかけてきた。莉緒ちゃんの方から声をかけてくるなんて予想外。
「たいしたことないからすぐ治るって。」
「…そう、なら良かった。あ、足抑えとく。」
腹筋をしようとしたら、莉緒ちゃんが足早を抑えてくれて、それはまあ助かるんだけど、体を起こす度に、莉緒ちゃんの顔が間近にあると、俺も男だし、手を出したくなってしまう。なんて思ってたら、
「高三の六月から部活に入ったって、チームに馴染めないって思ったの。三年間の全てをかけて最後の大会に挑むのに、私が入ると雰囲気を壊しちゃうでしょ?」
「そんなこと、」
「今までもそうだったから。」
悲しそうに言う莉緒ちゃんに返す言葉が見つからなかった。
「それに、私バレー上手いでしょ?レギュラーなんかすぐ奪っちゃうから、それだとレギュラー奪われる子が可哀想だと思って。」
莉緒ちゃんの言葉に思わず吹き出した。笑う俺を見て莉緒ちゃんも笑った。
実際きっと、そうなんだろうけど、真剣な顔で自信満々に言うから、それが面白可笑しくって、笑うのを我慢出来なかった。
「私、バレーが好き。だから、高校最後の試合、出られなくてもいいから、そのチームの一員として、仲間として認められる場所でバレーを終わりたいの。
それが私が女子バレー部に入部しないで、男子バレー部のマネージャーになった理由。」
俺は今まで莉緒ちゃんの事を誤解してた。バレーに対する真っ直ぐな気持ち。岩ちゃんがとか、そんなの関係ないんだ。
「これからもよろしく頼むよ、マネージャー。」
莉緒ちゃんの頭をくしゃくしゃと撫でた。