第12章 好きでいてもいいですか?(ヒロイン視点)
「あれ?莉緒なんでお弁当二つ?」
私の鞄に入った二つのお弁当箱にいち早く気付いた友人に突っ込まれた。
「お父さんのお弁当も持ってきちゃった。」
苦しい言い訳。
「えーじゃあ今日莉緒お弁当二つ食べるの?」
「いや、流石にそれは無理。」
「購買に行く子にあげる?」
このまま持って帰るわけにもいかないし。食べてくれる人がいるならそれはありがたい。でも、わざわざクラスメイトに聞くのも気が引ける。そう思った時、及川の顔が浮かんだ。
「及川にあげてくる。」
及川は大抵お昼はパンだし、及川なら多分食べてくれるだろうし。そう思ってお弁当箱を持って隣のクラスへ向かった。
「及川!」
及川のクラスに行き、及川の名前を呼ぶと、莉緒ちゃんが来るなんて珍しいね、なんて言いながらやって来た及川にお弁当箱を差し出した。
「お昼どうせパンでしょ?」
「え?うん、そうだけど…。」
「お父さんの分作ったんだけど渡し損ねて持ってきちゃったからあげる。」
「莉緒ちゃんの手作り?」
「うん。嫌なら他の人にあげてくる。」
「ううん!嫌じゃないよ!ありがとう!嬉しい!」
及川は笑顔でお弁当を受け取ってくれた。
「食べたらそのままお弁当箱返して。」
そう言って教室を出て自分のクラスへ帰ると、ニヤニヤしながらこっちを見る友人達。
「やっぱり噂は本当だったんだ?」
「噂?」
「及川と付き合ってるっていう。」
「は?何それ?」
「だって放課後いっつも一緒に勉強してるでしょ?」
「花巻も松川も一君もいるよ。」
「二人で帰ってるじゃん。」
「家の方向が同じなだけ。」
「ふーん。」
やっぱり及川と付き合ってるって噂があったんだ。一君の次は及川にも迷惑を掛けてる。人に迷惑をかけてしか過ごしていけない自分が嫌になる。
「お弁当渡せてよかったね。」
「だからそういうんじゃないって。」
「はいはい。」