第12章 好きでいてもいいですか?(ヒロイン視点)
お弁当を食べ終わると、言われた通り及川が空になった弁当箱を持って教室にやって来た。
「莉緒ちゃん、美味しかったよ、ありがとう。」
「どういたしまして。」
及川はいつもヘラヘラとしてるけど、今日は機嫌がいいのか一段とヘラヘラしていた。そのテンションのまま一君の所に行くと早速ウザいだ何だと言われていた。上機嫌な及川と反対に、一君は機嫌が悪そうだった。
そして放課後、今日は水曜日ということで、勉強会のない日。教室に迎えに来てくれた及川と一緒に帰った。教室を出る時、一君にまた明日ね、って声を掛けたけど、一君はなんだか素っ気なくて、その冷たい態度に心が傷んだ。どうして機嫌が悪いのか分からなかったけど、今までそんな風に冷たい態度を取られたことが無かったから少し悲しかった。
「莉緒ちゃん、あのお弁当本当は岩ちゃんに作ってきたんじゃない?」
そう言われ、私はドキッとした。及川に嘘を言ってもいつも見抜かれる。コイツは本当によく周りを見ている。
「…なんで分かったの?」
「なんとなく。」
及川はなんだか少し寂しそうな表情だった。
「諦めるなんて言っておいて、全然諦められてないんだよね。ダメだって思えば思う程苦しくて、一君の事ばっかり考えちゃう。」
一君の傍にいたい。その為には自分の気持ちを押し殺さなければならない。でもそれが苦しい。自分の気持ちに蓋をする事がこんなにも苦しいなんて思ってもいなかった。
「好きなら好きのままでいいんじゃない?」
及川のその言葉に涙が溢れた。
「私、一君の事…好きでいてもいいのかな?」
涙を流す私の事を及川は優しく抱き締めてくれた。不思議と及川の胸の中だと素直になれた。
「うん、好きでいていいんだよ。」