第12章 好きでいてもいいですか?(ヒロイン視点)
「及川、私一人で帰れるよ。及川だって、」
「俺は莉緒ちゃんと帰りたい。だから一緒に帰ってるんだよ?岩ちゃんに言われたからでもなく、自分の意思だから。だから、変に遠慮なんかしなくていいんだよ?」
そう言って頭を撫でてくれた及川の手を振り払ったけど、及川の言葉は嬉しかった。
その日はいつもより早く目が覚めたので、今日は自分でお弁当を作ろうと思い、台所へ向かった。そして、自分のお弁当箱とお父さんのお弁当箱を出した。そして、もう一つ予備のお弁当箱も。お弁当箱を出した時、一君にお弁当を渡す彼女の姿が思い浮かんだからだ。一君に手作りのお弁当を食べてもらえるなんて幸せだろうな。私がもし一君の彼女で、お弁当を渡したら同じように喜んで受け取ってくれるかな?なんて思いながら、三つのお弁当を作った。作った所で渡せる訳でもないのに。嗚呼、本当に馬鹿だな、私。諦めるなんて及川に言っといて頭の中はいつも一君の事ばかり。彼女の事を羨ましいとも疎ましいとも思う私。なんて嫌な奴なんだ。そう思いながらも、二つのお弁当箱を鞄にしまった。お弁当が出来、暫らくするとお母さんとお父さんが起きてきて、私がお弁当を作ったと知るや否やお父さんはありがとうと言ってお弁当を受け取ってくれた。
お父さんが仕事に出て、それからすぐ私も学校へと向かった。二つのお弁当箱が入った鞄はいつもより重たかった。渡せる訳ないのに、渡していい筈ないのに、一体私は何がしたいんだ。
学校に着いてからも渡せる機会なんてなくて、…ううん、渡そうと思えば渡せた。でも、それは許されな事だから。そもそもなんて言って渡そうと思ったのか。そんな事を考えているうちに昼休みを迎えた。