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【HQ】Egoist

第12章 好きでいてもいいですか?(ヒロイン視点)


「及川、ここなんだけどさ、」


 向かい側に座る及川に問題集を指差し、及川がそれを覗き込む。


「ああ、ここはね、」
「莉緒には俺が教える。」


 私の手から問題集を取り、問題文を読む一君。


「い、いいよ一君。私皆より全然勉強出来ないし、一君の邪魔になっちゃう。」


 口にするのは悔しいけど、それは紛れもない事実。そして、一君への恋心に気付いてしまった今、何も感じず今まで通りになんていかない。どうしてもドキドキしてしまう。そんなの、ダメだ。


「教えるのは自分の復習にもなるし遠慮すんな。」


 そう言って笑顔を見せる一君にこんなにもドキドキしてしまう。これじゃあ勉強に身も入らないし、こんなやましい気持ちでいたら彼女に悪い。そもそも、こうやって一緒に勉強する事でさえ、彼女からしてみればいい気はしないだろうに。でも、そう言ってくれる一君の優しさが嬉しくて、ただ、頷くことしか出来ない自分が嫌になる。


「じゃあそろそろ帰ろうか。」


 時刻は十九時。及川のその声に片付けを始め、図書室を出て、校門で花巻、松川と別れ、一君と及川と共に帰った。一応及川もいるけど、一君とこうやって一緒に帰るのは久しぶりで、緊張した。ずっと話し続ける五月蝿い及川の言葉が全然頭に入ってこなかった。どうやら勉強会を毎週月、火、木曜日と行うという事になったらしく、そのメンバーの中に勿論私と一君も含まれていた。


「それなら水曜日と金曜日は一緒に帰ってウチで勉強するか?」
「い、いや!一人で帰れるよ!」
「明るいとはいえ、危ねーだろうが。」


 彼女がいる一君と一緒に帰って、その上一君の家で勉強なんて、嬉しいけど図々し過ぎる。今日彼女を送って行ったというのなら、その水曜日と金曜日、彼女はどうするのか。彼女も一緒に三人で帰るというのなら、そんなの気まずいし、何よりも彼女に悪い。そして、二人の仲を目の前で見せつけられるなんて、そんなの耐えられない。

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