第12章 好きでいてもいいですか?(ヒロイン視点)
「莉緒、岩泉の事好き、だよね?」
前にも同じ事を美鈴さんに聞かれたことがある。それに私は笑顔で大好きだと答えた。また前と同じように答えればいい。大好きで、大事な友人だと。そう思ってるのに、前と同じようにそれを口にする事が出来なかった。そんな私を見た美鈴さんは、私の帽子に手を伸ばし、私に被せた。
「…ごめん。」
泣くつもりなんてなかったのに、自分の意思に反するように涙が流れた。もっと早く自分の気持ちに気付く事が出来たなら、今とは違う今があったのかな?そんなもしもの話をしたって、なんの意味もないのに。及川に、一君の彼女には私がいいと言われ、その言葉が嬉しかった。でも、私は何もしない事を望んだ。もし、一君の彼女になる事を望んで、一君に拒絶された時、一君の傍に友人としてもいれなくなるのは辛い。この気持ちに蓋を閉めることで一君の友人としている事が出来るなら、私はそっちの方がいい。