第12章 好きでいてもいいですか?(ヒロイン視点)
「突然帽子取って烏野のリベロの手を取るからビックリしたよ。」
体育館を出て、遅めのお昼を美鈴さんと取っている時にそう言われた。自分でも自分の取った行動には驚いていた。試合が終わったばかりで興奮していたのが主な原因だとは思うけど。
「てか、転校してからはポジションリベロだったんだ?」
「あ、はい。」
「私が言うのもアレだけど、莉緒に勝るようなセッターが転校先にいたとは思えないけど。」
「…怖かったんです。ボールをあげた先に誰もいないのが。でも、バレーを辞めるのはもっと怖かった。だから、ボールに一番最初に触るのが私なら、私の事を皆が嫌っていたとしてもそのボールを繋ぐしかないからって思って。」
そこまで言ってハッとした。こんな言い方したら、美鈴さんを責めてるみたいじゃない。言った言葉に嘘はなかったけど、だからと言って美鈴さんを恨んでるわけでも、責めたいわけでもないのに。こんなんだから、皆に嫌われるんだ。
「私もさ、莉緒が転校してからチームメイトと色々揉めて、高校最後の試合なんか酷いもんだったよ。全部無くしてから初めて莉緒が私に取ってどれだけ大切な存在だったか気付けた。そして、私はバレーをするのが怖くて逃げたの。まあ、結局サークルのマネージャーやって未練タラタラだけどね。
つーかさ、莉緒進路どうすんの?青城行ったんだから大学行くつもりなんでしょ?」
「あ、はい。…でも、ちょっと悩んでて。」
「何を?」
「父の仕事の関係でまた引越しになるだろうし、大学に入ったら今までみたいに簡単に編入とかいかないし。」
「親元離れて一人暮らしすればいいじゃん。」
「…ですよね。」
進学するにしても就職するにしても、今までみたいにずっとお母さんとお父さんと暮らす訳にはいかない。就職するなら余計にだ。
「まあ、オバサンの事心配な気持ちも分かるし、莉緒が一人暮らしってのも心配だけどね。」