第12章 好きでいてもいいですか?(ヒロイン視点)
「大丈夫?」
「あ、すみません…!」
慌てて涙を拭った。ここに立つのが青城たったなら、そして、そのコートの中に私も立てたなら。────昨日からそればっかりだ。
「行こっか。」
「あ、美鈴さん、すみません。私、烏野のセッターに用があって、」
「知り合い?」
「そういうのじゃないんですけど。」
美鈴さんと観客席を立ち、烏野のいる場所へと走った。丁度、烏野の所へ来た時、ウシワカと烏野のセッターと十番が話してる所だった。
「絶対同じ舞台まで行ってみせます!!!」
「絶対及川さんより上手いって言わせます!!!」
その言葉になんの返答もせず、ウシワカはコートへと戻っ行った。
「あの!」
声を張り上げると、彼らは私達の方を見た。彼らの友人だろうか、私の隣にいる美鈴さんを見て綺麗だと呟いたのが聞こえた。私は帽子を深くかぶり直し、鞄から生徒手帳を取り出した。
「これ、あなたのよね?」
そう言ってそれを烏野のセッター、影山に差し出した。彼はそれを受け取ると、中身を確認した。
「あ、これ無くしてたやつ…あざっス!」
「お前どこで落としたんだよ?体育館で落とすとか恥ずかしい奴だな。」
「なんだと!?つーか、今日落としたんじゃねーし!結構前からなかった。これ、何処で?」
「青城の体育館の前で。夏休み終わって割とすぐの頃。偵察にでも来てた?」
「…っ!」
「あ、別に責めようと思った訳じゃないから。返す手段がなくて、どうしようかと思ってたけど、渡せてよかった。」
「青城の人、ですか?」
「うん。青城バレー部マネージャー。」
お前偵察行ったのバレてんじゃねーかと、喧嘩を始める二人。まあ、生徒手帳返せたし、もういいかな。てか、フルセットした後に喧嘩する元気があるなんて。
「お前ら何やってんだ?そろそろ表彰式始まんぞ。」
そう言って喧嘩を止めに入ったのは、烏野のリベロ。あの凄いリベロが目の前にいると思うと、この感動をどうしても言葉にしたくて、深くかぶり直した筈の帽子を取り、彼の手を取った。