第12章 好きでいてもいいですか?(ヒロイン視点)
シンクロが決まりマッチポイントを凌いだが、また白鳥沢のマッチポイント。
「下を向くんじゃねえええええ!!!バレーは!!!常に上を向くスポーツだ。」
烏野の監督の言葉に下を向いていた皆の顔が上がった。そしてそこに烏野の十一番が帰ってきた。白鳥沢のピンチサーバー投入。ジャンプフローター。その取りにくいボールを烏野の主将が拾い、ツーアタックが決まった。15-15。そしてメンバーチェンジ。十一番がコートへ戻ってきた。ここにきて、強気なサーブ。どっちもよくボールを繋いでる。フルセットでの試合、皆限界だろうに。初めて見る十一番のブロードにつられたブロック。そこを烏野の五番が決める。────16-15、烏野のマッチポイント。
白鳥沢のタイムアウトあけ、互いにサーブミスが続き、点差は変わらず。何度目かのマッチポイントを迎えた。烏野のエースのスパイク、ブロックに上手く跳ね返り、五番がそれを拾う。それに烏野十番が飛び込んでくると思ったのに、彼はその場を動かず、テンポを自らずらし、他のスパイカー達に紛れ、シンクロ。あげられたトスに十番が跳ぶ。ブロックは誰もいない。白鳥沢のリベロの腕に当たったボールはそのまま後方へ流れた。そして、コートへ落ちたボール。
21-19
セットカウント 3-2
試合終了を告げるホイッスルが鳴った。そのホイッスルを合図に、私の目からは涙が溢れた。自分のチームじゃない試合を見て、初めて泣いた瞬間だった。