第12章 好きでいてもいいですか?(ヒロイン視点)
「で、莉緒ちゃんは誰と待ち合わせ?」
「…美鈴さん。」
そう言うと及川は笑った。
「そっか。良かったね。」
こうやって美鈴さんとまた前みたいに会えるようになったのは及川のおかげだよ。自分の事みたいに嬉しそうに笑ってくれる及川。性格悪いなんて言ったけど、及川がいい奴だってのは分かってるよ。
携帯が鳴り、画面に目を移すと、
『ごめん。少し遅れそう。先に中入ってて。』
美鈴さんからだった。
「四宮さんから?」
「うん。少し遅れるって。」
「じゃあ先に中入る?また変なのに絡まれたらアレだし、一緒に行こうか?」
「うん。」
帽子をかぶり直し、及川と一緒に体育館へ入った。
体育館に入ると、そこは白鳥沢一色。応援団にチアリーダー。観に来ている生徒の数も尋常じゃない。
「相変わらずムカつく。」
「及川、ほんと白鳥沢嫌いだね。」
及川と最後尾の席に座った。そして試合開始のホイッスルが鳴った。
スタートから烏野は凡ミスが続き、ブレイクを許した。そして、三本の指に入るスパイカー牛島若利の強烈なスパイク。初めて生で見る強烈なスパイクに心が震えた。パワーも高さも一級品、加えて左利き。あんな凄いスパイク、私も拾ってみたい。
「あれ?なんで及川いんの?」
「やっほー四宮さん。」
「もしかして私邪魔だった?」
「いえ!たまたま及川と外で会っただけで…!」
「四宮さん来るまで莉緒ちゃんが退屈しないように一緒にいただけなんで、あとは二人でごゆっくり。」
「そう?じゃあ莉緒連れてくよ?
莉緒アンタもっと前で観たいでしょ?向こう前の方空いてたからアッチに行こう。」
「はい!」
及川にじゃあねと手を振ると笑顔で見送ってくれた。