第2章 彼女の素顔
高校生にもなってドッヂボールなんて、って思ったけど、これがやってみると結構面白くって、皆熱中してた。アホな男子共は莉緒ちゃんに視線を奪われ、よそ見してる内にボールに当たる奴も結構いた。クラス対抗で、相手チームには岩ちゃんがいて、岩ちゃんのボールがこれまた強烈で、取ると結構痛い。こっちには俺がいるし、負けるわけないけど、五組は運動部が多いから、若干六組の劣勢。
女子の方はドッヂボールは決着がついたみたいで、五組の圧勝。
というか、殆ど莉緒ちゃんの活躍のおかげ。可愛い顔して、投げる玉は男子顔負け。ニコニコしながら楽しそうにクラスメイトと話してる。
「おい!及川!」
目の前に迫るボールに反射的に手を出すが、反応が遅れ、ボールは俺の指にあたって、地面に落ちた。
「及川アウトー!」
俺としたことが、他の連中同様、莉緒ちゃん見ててアウトになるなんて。こうなったら外野から攻めるしか。そんで、すぐ内野に戻ろう。
「及川!」
莉緒ちゃんが俺の元へ走ってきて、俺の手を握った。名前を呼ばれただけでもビックリしたのに、あの莉緒ちゃんが俺の手を握ってる。心配そうに俺の指を見つめる莉緒ちゃん。それを恨めしそうに見る男子達。真剣な顔の莉緒ちゃんを見てると自然と握られていない方の手が莉緒ちゃんの顔の方に伸びた。が、俺の手を見るため、下を向いていた莉緒ちゃんが顔を上げ目が合った。咄嗟に伸ばした手を下ろした。
あれ?俺、今何しようとした?
「…やっぱり突き指になってる。保健室行こう。
先生、私及川を保健室に連れて行ってきます!」
莉緒ちゃんはそのまま俺の手を握って、体育館を出た。