第11章 恋、気付く時
「及川、今日はありがとう。ごめんね。」
泣きはらした莉緒ちゃんの目は赤く腫れ上がっていた。元気づけるつもりで出掛けたのに、かえって莉緒ちゃんに辛い思いをさせてしまった。
「莉緒ちゃん、俺は莉緒ちゃんの味方だよ!」
「うん、ありがとう。」
力無く笑う莉緒ちゃんはそう言ってマンションの中へ入って行った。そんな莉緒ちゃんを見て苦しくなった。莉緒ちゃんは大事な仲間だから、いつだって笑っていて欲しいし、その為に俺が出来ることなら何だってする。
家に帰って、莉緒ちゃんと岩ちゃんの事を考えた。
岩ちゃんは多分、あの子の事が好きだったから付き合ったとかじゃないと思う。どういう理由で付き合う事になったのか、それは岩ちゃんに聞かないと分からない。でも、それを聞いたって答えは返ってこないだろう。岩ちゃんこういう話好きじゃないし。それに岩ちゃんは好きでもない子と付き合うようないい加減な奴でもない。仮に今彼女に対してそういった気持ちがないとしても、付き合ったからには、彼女の事を好きになろうと努力してる筈。岩ちゃんの彼女が岩ちゃんをアクセサリー感覚で楽しんでいるような奴だったら、全力で岩ちゃんから引き離すけど、多分そうじゃない。彼女は本当に岩ちゃんが好きなんだと思う。このまま放っておけば、情に絆された岩ちゃんが彼女を本当に好きになってしまうのも時間の問題。そうなると入り込む余地はない。
「ああ、そうだ。岩ちゃんが莉緒ちゃんを好きになればいいんだ。」
ずっと大事に思ってきた莉緒ちゃん。その莉緒ちゃんに恋心がないにしても、莉緒ちゃんの存在は岩ちゃんにとっても特別な筈だ。そんな莉緒ちゃんの好意を岩ちゃんは無下には出来ない筈。それなら俺が出来る事は一つ。彼女から岩ちゃんを取り返せばいい。岩ちゃんに莉緒ちゃんを好きになってもらえばいいんだ。