第11章 恋、気付く時
暫くすると、岩ちゃんに手を引かれ莉緒ちゃんが戻ってきた。その姿を見た彼女の顔は複雑そうだった。まあ、岩ちゃんはいつも通りで特に何も考えてないんだろうけど、彼女いるのに、流石に今まで通りはどうかと思うけど。
莉緒ちゃんは俺らの姿に気付き、岩ちゃんの手を離した。
「勝手にいなくなってごめんなさい。デートの邪魔してごめんね。」
「いえ。」
「及川、莉緒から目を離すなっていつも言ってんだろ!」
俯いたままの莉緒ちゃんの目は赤くて、咄嗟に莉緒ちゃんの手を握った。
「うん、ごめん。次から気を付ける。二人共邪魔してごめんね。」
まだ岩ちゃんが何か言いたそうだったけど、莉緒ちゃんの手を引いてその場から急いで離れた。振り払われると思ったのに、莉緒ちゃんは俺の手を振り払わなかった。手を繋いで歩いてる間、俺も莉緒ちゃんも何も話さなかった。
昔よく三人でバレーをした公園のベンチに莉緒ちゃんを座らせ、自動販売機で買ったミルクティーを莉緒ちゃんに渡し、ベンチに座る莉緒ちゃんの前に屈んだ。
「莉緒ちゃん、岩ちゃんの事好き?」
「…好き。」
そう言って涙を流す莉緒ちゃん。
「及川、どうしよう。私、一君の事が好きなの。」
「うん。大丈夫だよ。」
涙を流す莉緒ちゃんを抱き締めた。莉緒ちゃん、きっと今まで自分の気持ちに気付かなかったんだろうな。でも、岩ちゃんに彼女が出来て、ようやく自分の気持ちに気付けたんだ。
莉緒ちゃんは俺にしがみついて沢山泣いた。それに気の利いた言葉なんてかけてあげられなくて、それがもどかしく感じた。