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【HQ】Egoist

第10章 恋、気付く時(ヒロイン視点)


「大丈夫だったか?」


 少しだけ屈み、私の目の高さに合わせそう聞いてくれる一君。どうして一君が?彼女は?聞きたいことは沢山あったけど、それを声にする事は出来なかった。涙を拭ってくれる一君の手が温かくて、また涙がこぼれた。


「行くぞ。」


 そう言って私の手を引いて歩く一君。さっきまで彼女の手を繋いでいたその手が私の手を握る。嬉しいのに、何故か悲しくて、涙が止まらない。
 一君に彼女が出来て嬉しいと思った。一君は誰よりも大切な存在で、私の特別な人。私が辛い時は支えてくれ、私のピンチにはいつも駆け付けてくれるヒーロー。一君がいなかったら、私はきっと何処かで躓いていて、起き上がる事が出来なかった。そんな私をいつも引っ張ってくれた。


 一君が好き。


 私、一君の事が好きだったんだ。ずっと前から一君の事が好きだったんだ。この胸のモヤモヤは、一君を他の誰かに取られた嫉妬心。自分の気持ちにやっと気付けたのに、一君の心は彼女のもの。

 繋いだ手からこの気持ちが伝わればいいのに。

 どうして私はいつも失ってから大事な事に気付くんだろう。


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